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はじめに
「社内でみんなが使っているツール以外を使うと、基礎ができていないと言われる」。そんな話を聞いたことはないでしょうか。
この物語では、使うツールの好みが、なぜか「基礎力」の評価にすり替えられてしまう職場を描きます。 SIerは「古臭い」と言われがちですが、問題は技術への感度ではなく、別のところにあるのかもしれません。
本記事は、個人や企業を誹謗中傷することを目的としたものではなく、以下を目的としています。
- 企業からは都合の良い情報しか発信されないことが多いため、求職者が一方的な情報に惑わされないようバランスを取る
- 仕事の中で起こりうる想定外な出来事や、理不尽な出来事をあらかじめ知り、対処や心構えの一助としていただく
- 業界に対して不満はあるが、立場上声を上げにくい現場の方々に代わって、内情を吐露することでガス抜きの場とする
実体験をもとに、なかなか表に出てこない業界の実情をお伝えし、学生やエンジニア、マネージャーの皆様の今後のキャリア選択に役立てていただければ幸いです。
「同調圧力が強い会社におけるツール選定」

これは、とあるSIerでの出来事。
官公庁や民間企業の業務システムを請け負い、Javaを中心とした開発を行っている会社だった。 社内では長年の慣習から、テキスト編集は サクラエディタ、Javaの開発は Eclipse、サーバーへの接続は TeraTerm を使う人が圧倒的多数を占めていた。
新しい技術のキャッチアップ自体は、決して遅れているわけではない。 クラウドやコンテナ、生成AIの勉強会も開かれ、新しい取り組みに前向きな社員も多い職場だった。
そんな中、中途入社した部下Aは、これまでの経験から、Javaの開発には IntelliJ IDEA、サーバーへの接続には Rlogin を使っていた。
1. エディタ編
ある日、上司Bが部下Aの席の後ろを通りかかった。
- 上司B 🤨 「ん? それ、Eclipseじゃないね。」
- 部下A 🙂 「あ、いえ、IntelliJ IDEAです。補完やリファクタリングが便利なので使っています。」
- 上司B 😒 「ふーん……。テキストの編集もサクラエディタじゃないの?」
- 部下A 😊 「IDEの組み込みエディタで済ませています。ファイル間の移動が楽なので気に入っています。」
- 上司B 😑 「…………そう。」
2. ターミナル編
数日後、部下Aがサーバーのログを確認していると、再び上司Bが画面をのぞき込んできた。
- 上司B 🤨 「ターミナルもTeraTermじゃないね。」
- 部下A 😊 「Rloginです。タブ管理で複数サーバーに同時操作ができるので、このプロジェクトでの利用にてきしているかと。」
- 上司B 😠 「みんなTeraTermでやってるんだよ。なんでわざわざ違うものを使うの?」
- 部下A 😳 「便利だからですが……。」
3. 「基礎ができていない」編
その日の夕方、部下Aは会議室に呼び出された。
- 上司B 😠 「サクラエディタとEclipseとTeraTerm、みんなこれでやってるんだよ。そういう変なツールに頼る前に、まず基礎をしっかり身につけないとダメだよ。」
- 部下A 😳 「え……基礎、ですか?」
- 上司B 😤 「最初は基礎が大事なの。その後に応用がある。」
Javaの文法も、HTTPやSQLの知識も、サーバー操作もひと通り身についている。 実際、担当した作業は期日通りに、品質面でも問題なく進んでいた。
上司Bにとって重要なのは、成果物の中身ではなく、 「自分と同じやり方をしているかどうか」 だったのである。
4. 悔し泣き編
その後も、上司BはことあるごとにAが基礎ができていないと周りに噂話をした。
涙目でキーボードを入力しながら、部下Aは声を押し殺して泣いた。
その会社では、他にも「前例のないやり方」を提案すると、「うちのやり方に合わせて」と言われる場面が度々あった。 新しい技術の話題には関心を示しながら、いざ自分の周囲で違う選択をする人が現れると、受け入れられない。 そうした空気が、静かに広がっていた。
解説
ツールは、筆記で言えば鉛筆やシャープペンシルのようなものです。 その人が書きやすければどれを使っても構わず、書かれた文章の質とは関係がありません。 エディタ・IDE・ターミナルも同じで、基礎力とは「Javaやネットワーク、データベースの仕組みを理解していること」であり、どのツールを使っているかではありません。
また、SIerはよく「古臭い」と言われますが、新しい技術自体を拒んでいるわけではなく、同調圧力が強く、自分が好きなもの以外を認められない人が一定数いることにあります。
こうした環境では、次のような弊害が起こりがちです。
- 成果ではなく「同じやり方か」で評価される
- 生産性を上げる工夫が、「生意気」「基礎不足」として扱われる
- 新しい提案をする人が萎縮し、組織全体の改善が止まる
世の中には、ツールの好みと能力を結びつけて考える人が実際に存在します。 このような相手に正論をぶつけても、議論が成立しないことも少なくありません。 「相手が評価しているのは成果ではなく同調かどうか」という前提を理解しておくだけでも、必要以上に落ち込まずに済みます。
おわりに
世の中には様々な企業や人が存在し、常識では考えられないようなことが実際に起きています。 ツールの好みで能力を判断されるのも、その一例です。
しかしAIの台頭により、これまで人手不足で仕方なく見過ごされてきた、同調圧力で生産性を下げている会社や取引先と関わり続けることは、今後リスクになっていく可能性があります。 成果よりも「同じやり方か」を求められる環境に疑問を感じたら、発注先や取引先を見直す、転職する、あるいはフリーランスとして独立するなど、環境を変える選択肢を検討してみてもよいかもしれません。