はじめに
ITエンジニアを目指す人の多くが、一度は「SES」という言葉を耳にするでしょう。
多くのIT企業が採用する働き方で、未経験から実務経験を積む入口になるケースも少なくありません。
しかし、SESには、エンジニアが自分の市場価値を把握しにくい構造的な課題があります。
その中心となるのが 「単価」 と 「多重請負」 です。
なぜ企業はエンジニアに自分の「単価」を伝えたがらないのか?
この記事では、その仕組みと背景を、これからエンジニアを目指す方に向けて解説します。
SESとは?
SES(System Engineering Service)とは、
「システム開発や保守・運用といった業務に対して、エンジニアの作業を提供する契約形態」です。
- 契約は準委任契約(成果物ではなく作業に責任が発生)
- 顧客先のオフィスに常駐して仕事を行うケースが多い
- 月の労働時間の合計が140~180時間の間になるように働くという契約になっていることが多い
つまり、
エンジニアを“期間限定でレンタルする”ようなイメージに近い仕組みです。
企業は自社に不足している技術力を補うために、SES企業からエンジニアを借りて、自社の業務を代行してもらうわけです。
形式上は社員が指揮命令を受けない前提の契約ですが、現場では“派遣労働に近い状態”になります。
エンジニアの値段、「単価」の仕組み
単価とは、
SES契約をしたクライアント企業が、あなたの所属会社へ毎月支払う金額のこと を指します。
例えば、あるA社のSEがクライアントB社のプロジェクトに参加している場合、SEの単価が50万円であれば、B社はA社に単価を支払う必要があります。
単価はSEの技術レベルや経験年数などによって上がる、いわば自身の市場価値となります。
ここで多くのエンジニアが疑問に思うのが、
「自分の価値は50万円なのに、なぜ自分の給料は50万円より低いの?」
という点です。
この差額はどうなるのか?
会社に入る単価50万円から、以下が差し引かれます:
- 会社負担の社会保険料
- 交通費
- 営業担当の人件費
- 会社のオフィス維持費
- その他の固定費
残った金額が会社の利益(粗利)となります。
企業が単価を教えたがらない理由
最大の理由は、
利益の内訳を不透明にしておきたいから です。
単価を知られると:
- 給与交渉の材料にされる
- 自分の市場価値を理解され、他社に流れやすくなる
- 「会社がどれだけ抜いているか」を知り不満が増える
といったリスクが生じるため、隠したがる企業が多いのです。
多重請負構造——単価が削られていく仕組み
IT業界では、
大手SIerを頂点とする ピラミッド構造の多重請負 が一般的です。
例として、以下のような流れがあります(マージン率は一例です):
- 元請け(プライム)
顧客から120万円で受注 - 2次請け
元請けから仕事を受け、15%抜いて102万円で流す - 3次請け
さらに15%抜いて約87万円で4次に流す - 4次請け
87万円で受注し、SEを現場に派遣
顧客が支払う120万円が、企業を経由するごとに“中抜き”され、4次請け所属企業が受け取るのは87万円にまで下がります。
給料はこの87万円から支払われるため、階層が下になるほど収入が伸びにくくなるのです。
労働内容は同じでも、末端の企業にいるSEほど給料が低くなるような構図になっています。
自身の単価を公開しない、末端の企業にいると低賃金で働かされ、続けることになります。
低賃金の会社への入社を避けるには?
上記のような会社を避けるには、求人で給与を確認するだけでなく、以下の点を確認してみるとよいでしょう。
- 社員に単価を公開しているかどうか
最近では、単価連動型SESという社員に単価を公開して、単価に応じた給与を支払うという会社もあるようです。
自身の市場価値に対して、適切な給料が支払われているかどうかを提示できる企業か確認してみましょう。
単価を提示できない場合、そこには会社側のやましい意図が必ずあるはずです。
また、PE-BANKというフリーランスエージェントでは、単価とマージン率公開した状態で契約が可能なので、独立も視野にいれている方はこちらも登録しておくとよいでしょう。
- 商流を確認する
入社しようとしている企業が商流の中でどのぐらいの位置にいる会社なのか調べてみましょう。
孫請け以下になるとかなりマージンを抜かれていることになるので、できるだけ商流の上にいる企業に入社することをおすすめします。
おわりに
SESという働き方が必ずしも悪いわけではありません。
未経験でも現場に入りやすく、経験を積む機会が得やすいメリットがあります。
しかし、健全なキャリアを築くには、業界構造を理解した上で企業を選ぶことがとても重要です。
自分の価値は、自分で守り高めていく必要があります。
この記事が、SEを目指す方のキャリアの第一歩をより確かなものにする手助けになれば幸いです。