はじめに

顧客が明確に伝えたニーズを正しく理解できないまま、無理に案件を受注しようとする「くれくれ営業」は、顧客の時間を奪うだけでなく、会社の信頼そのものを損ないます。 この記事では、Entra IDに関する依頼を巡って発生した認識のズレと、その後の営業報告書を巡る不可解なやり取りを紹介します。

本記事は、エンジニアや企業を貶めることを目的としたものではありません。情報収集が困難な業界内情を提供し、今後のキャリアに役立てていただくこと、そして業界への監査を行うことを目的としています。


チャンスを自ら潰す案件潰しPL その2

案件依頼

これは、大手メーカー系SierのB社の下請けとして開発案件を受けている、岡山県のシステム会社A社での出来事。

A社は数十名規模のシステム会社で、B社から受注した案件をPL(プロジェクトリーダー)とエンジニア数名の体制で回すことが多かった。 ある日、B社からA社のエンジニアCに、Entra IDでのユーザー管理設計に関する問い合わせがメールで届いた。

  • 顧客B社 🙂 「別案件でEntra IDのユーザー管理設計をする必要があるんですけど、Cさんはその辺の知見ってありますか?」
  • C 😐 「僕はちょっと詳しくないんですけど、社内で該当の知見があるエンジニアを探してみます。」

Cは該当のエンジニアを探すため、営業報告書を作成しPLに提出した。すると、PLからこう返信が来た。

  • PL 🤔 「社内ルールで、クライアントのニーズをFace to Faceで確認しないと、営業報告書出しても『クライアントのニーズを詳細に聞け』って突っ返されるんよ。」

PLは社内で適切なエンジニアを探すため、顧客に対面で詳細な打合せをしたい旨をメールで連絡した。


打合せ

打合せが始まると、顧客が丁寧に背景を説明し始めた。

  • 顧客 🙂 「A社さんに依頼をした背景なんですけど、ユーザーがオンプレからクラウドへの移行を検討中で、クラウド化にあたりいくつか課題があります。」
  • 顧客 🙂 「A社さんにはそのうち、『Entra IDの部分』を対応していただきたいと考えているんですよ。」

分かったような顔で頻繁に相槌を返すPL。

  • C 😶 (本当に分かってるのかな……。)

顧客の話によると、クラウド化にあたってリソースをIaC化することなど複数の課題があり、そのうち依頼したいのはEntra IDによるセキュリティ設計の部分のみだという。

顧客の説明が一通り終わったところで、PLが口を開いた。

  • PL 🤔 「C君は(Entra IDの設計)できんのかなぁ?」
  • C 😳 「え!? もともと私が対応できないから、社内で技術者を探すって話でしたよね?」

すると、PLが声を張り上げ、驚愕の発言をした。

  • PL 😤 「社内で(技術者を)探したけど、いなかったんよ!!」
  • C 😨 「!?」

そもそもこの打合せは、社内で該当のスキルセットを持つエンジニアを探すために、クライアントのニーズを聞く必要があるという理由で開催されたものだった。 ニーズを聞かなくても社内でエンジニアを探せるなら打合せを開く意義は薄れるし、既に社内に該当のスキルセットを持つエンジニアがいないと分かっているなら、なおさら打合せを開く意味がない。

恐らく、顧客にすり寄って、あわよくば案件を受注しようとしたのだろうが、 顧客にメリットを提案できもしないのに、無理やり仕事を受注しようとする「くれくれ営業」は、顧客の時間を奪うだけの迷惑行為に他ならない。 にも関わらず、よりによって顧客がいる前で本音を口にしてしまったのだ。

  • 顧客 😶 「Oh……」

引き気味で言葉を失う顧客。
打合せは「スキルセット的にA社では対応が難しそうだ」というニュアンスで終わった。

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その後

受注は困難という話になったが、今回の打合せも営業活動にあたるため、Cは依頼の背景と内容を報告書にまとめ、PLにメールで提出した。 すると、PLが印刷した紙をCに渡してきた。

  • PL 😐 「ちょびっと変えましたー。」

どうやら、Cが提出した営業報告書の一部をPLが修正したので、確認しろということらしい。

  • C 😑 (印刷する意味ないだろ。メールかチャットに添付しろよ……。)
  • C 😑 (「ちょびっと変えた」ってどこをどう変えたか言わないと、全文読まないといけないじゃん。)
  • C 😑 (そもそも受注しないと決まった案件の営業報告を直しても時間の無駄だろ、要領悪いな。)

文句を心の中で言いつつ、PLが直した営業報告書に目を通す。 すると、依頼の背景部分が、「顧客がクラウド化の複数課題をA社に依頼したい」という内容から、「ユーザーのクラウド化の複数課題を丸ごと引き受ける、難易度の高い超上流工程だからA社では受注できない」という文言に書き換えられていた。

  • C 🤨 「依頼の背景部分、打合せの内容と違いますよね? 顧客はEntra部分をうちに依頼したいって話で、全部うちでやるって話ではなかったですよね。」
  • PL 😠 「全部やって欲しいって思ってると思うよ!」

顧客はメールと打合せで明示的に「Entra IDの設計」を依頼したいと言っていたにもかかわらず、根拠を述べずそう言い張るPL。

  • C 😓 「EntraとIaCって全く別物ですし……。」
  • PL 😤 「関係していると思うよ!」
  • C 😶 (IaCが何かわかってないんだな……。)

自身の発言の根拠を示さないまま水掛け論になり、らちが明かない。 ほぼ受注しないと決まっている案件にこれ以上時間を割いても無駄だと感じたCは、やむを得ずPLの営業報告書を承諾した。

  • C 😮‍💨 「まあ、社内で顧客からこういうニーズがあるってことが分かればいいんじゃないですかね……。」

その後、営業報告書は社内に提出されたが、PLは顧客Bへ正式な断りのメールをすることもなく、案件を放置した。 それ以降、B社の担当者からA社に仕事の依頼が来ることはなくなった。

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解説

「社内で技術者を探したがいなかった」と顧客の前で明かしてしまう配慮のなさは、顧客との信頼関係を大きく損ないます。

こうした行動の背景には、顧客の要件を正確に読み取る力の不足と、自分の面子を保つことへの強いこだわりがあると考えられます。
結果として顧客は「A社は任せられない」と判断し、以降の依頼が途絶えるという、会社にとって最も避けたい結果を招いてしまいました。


おわりに

世の中には、こうした不適切な営業スタイルを繰り返すPLや会社が実際に存在します。

しかしAIの台頭により、要件整理や提案の下地作りをAIが担えるようになれば、「人手が足りないから仕方なく発注する」という力学は弱まっていくでしょう。 コミュニケーション能力や提案力に乏しいPL・会社は、これまで以上に選ばれにくくなっていくはずです。

もしあなたが、今回のPLのような振る舞いが日常的に行われる会社で働いているなら、その環境に留まり続けることはキャリア上のリスクになりかねません。 優良企業への転職や、フリーランスとして独立して環境そのものを変えることも、選択肢の一つとして考えてみる価値があるはずです。


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